F1五輪観戦記

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フェルスタッペン「予定調和」の逆転劇と、ペレスの意地——マイアミGP

マイアミGPで逆転勝利を挙げたフェルスタッペン(左)と2位のペレス

フェルスタッペンが9番手スタートからラスト9周で首位ペレスを抜き去る逆転勝利を挙げた。これでシーズン3勝目で、ランキングでのペレスとのポイント差は「14」に開いた。フェルスタッペンの勝利にドライバーとしての盤石さを感じるとともに、ペレスの防戦にも「意地」を見た一戦だった。

ドライバーとしての充実を感じるフェルスタッペンの追い上げ

予選Q3のミスにより中段グリッドからのスタートを強いられたフェルスタッペンだが、追い上げに無理な動きはなかった。直線が速くブレーキも安定するマシンの優位を生かし、予定調和のように順位を上げていった。

彼の充実ぶりを感じさせたのは4周目のこの場面。

フェルスタッペンがマグヌッセンとルクレールをまとめてパスした場面

バックストレートでマグヌッセンとルクレールの攻防を目にするや、17コーナー手前でやや早めにアクセルオフ。最終コーナーにかけてスムーズにトラクションをかけ、ホームストレートでの加速が鈍る2台をまとめて交わしていった。(※この記事に引用した映像では最終コーナー立ち上がり以降しか映っていない)

レッドブル2台のタイムバトルと、コースでの直接対決

このレースはポールポジションのペレスやアロンソフェラーリ勢がミディアムタイヤでスタートしてハードに交換する作戦、中段スタートのフェルスタッペンやハミルトンはハードスタートでミディアムに換えるタイヤ戦略を採用した。総じて、後者が有利に働いたようだ。

各車のタイヤ戦略

レース序盤、ペレスはミディアムのペースに苦しみ、アロンソ以下を十分引き離すことができない。レース後、彼は「逆の戦略であればよかった」と唇を噛んだ。一方のフェルスタッペンは15周目にアロンソを抜いて2位に上がり、19周目にはペレスの1.5秒後方まで肉薄。ペレスをタイヤ交換に追い込んだ。

レース中盤はタイヤ未交換の首位フェルスタッペンと、ハードに交換済みの2位ペレスのタイムバトルが見どころだった。一時はペレスが14秒台まで差を詰めるが、その後はフェルスタッペンが使い古したハードタイヤで好タイムを連発。両者の間隔は37周目の15秒835から44周目の18秒384へとじりじりと開いていった。

フェルスタッペンが45周目終わりにタイヤ交換するとペレスが前に出たが、差は約1秒。フェルスタッペンはすぐさま追撃にかかった。

47周目。フェルスタッペンがバックストレートでDRSを使い、17コーナー入り口でペレスのアウトに並びかける。ペレスはやや右に寄せて際どくブロック。

フェルスタッペンは攻撃の手を緩めず、17コーナーから最終19コーナーにかけて立ち上がり重視のラインを選び、ホームストレートでの加速が鈍いペレスを左右から揺さぶった。最後は1コーナーアウトから被せ、2コーナーまでに前に出た。

ペレスの前に出たフェルスタッペン

悔しげなペレス、フェルスタッペンに最大限の抵抗

ペレスの17コーナーでのブロックと、1~2コーナーの並走は、チームメイト間で可能な最大限の抵抗といえた。

レース後インタビューのペレスの表情が予想以上に悔しげで驚いた。フェルスタッペンと言葉を交わす際も笑顔はない。

そもそもこのレースでペレスはポールからのスタート。フェルスタッペンの追い上げは想定内とはいえ、得意といえる半公道(仮設コース)のマイアミは是非とも勝ちたい一戦だった。ここで勝てばチャンピオンシップも逆転できる。

その重要なレースを落とした。内心、相当悔しいだろうし、そうでなければレーシングドライバーではない。

優勝インタビューに答えるフェルスタッペンと、複雑な表情でビジョンを見るペレス

今シーズンのF1について、「レッドブル独走でつまらない」との声もあるようだ。しかし、私はペレスが敗戦を本気で悔しがり、チャンピオンシップに向かってファイティングポーズを取り続ける限りにおいては、今シーズンもまだまだ楽しめるのでは、と感じている。少なくとも、公道・半公道のモナコとカナダを見るまでフェルスタッペン戴冠を決めつけるのは早いのではなかろうか。

この記事で言及できていないが、3位のアロンソや、戦闘力の低いマシンで奮闘した角田など、今シーズンの見どころは尽きないと感じる。