F1五輪観戦記

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ニューガーデン、赤旗3回後の「残り1周レース」を制する——インディ500

第107回インディ500を制したニューガーデン

赤旗3回の荒れたレース。ニューガーデンが赤旗再開後の「残り1周レース」でエリクソンをパスし、自身初のインディ500制覇を果たした。米国人選手の大逆転優勝で観客は大いに沸いたが、ファイナルラップ1周のレースをさせた運営の見識も問われる一戦だった。

異例の静けさで始まったレース、次第に混戦模様に

スタートから90周以上もフルコースイエローがない、異例の静けさで始まった第107回インディ500。あとから思えば嵐の前の静けさだったか。

92周目に提示された最初のイエロー中に、予選1位、2位のパロウとヴィーケイがピットロードで衝突した。このレースの前半を支配した両者は大きく順位を落とし、にわかにレースは混戦模様となった。

レース後半はマクラーレン勢のオワードとローゼンクビストが順位を入れ替えながら首位を守ったが、フルコースイエローの合間にするすると順位を上げたのが予選10位のエリクソンと17位のニューガーデン。予選4位のフェルッチと合わせて残り50周のトップ争いに加わった。

優勝したニューガーデン

クラッシュが相次ぎ、3回の赤旗

残り16周。ローゼンクビストが壁に軽くヒットし、体勢を立て直せぬままスピン。そこにカークウッドが衝突して激しく壁に激突し、車体がひっくり返った。外れたリアタイヤが金網を跳び越え、コース外の駐車場に落下する大アクシデントが起きた(跳ぶ角度が少し違ったら観客席に飛び込むところだった)。これで1回目の赤旗掲示された。

赤旗後、残り8周でグリーンフラッグ。ニューガーデンがターン1の大外から、オワードとエリクソンを2台まとめて交わして首位に立った。

3位に落ちたオワードは続くターン3でエリクソンを抜き返しにかかるが、際どくインを閉められ、体勢を崩して壁に激突。同じ場所でパジェノーもクラッシュし、ハンドル操作が不能になったカナピーノがオワードのリアに突っ込むなど、後方は大混乱に陥った。残り7周の段階で2度目の赤旗に。

残り4周でイエロー解除。ニューガーデンはリスタートの加速を遅らせすぎたのが祟り、エリクソンに前に出られた。その直後、車間が詰まった後方集団がホームストレートでクラッシュ。このままフルコースイエローでレース終了かと思いきや、これで3回目の赤旗になった。

赤旗後、ファイナルラップ1周のレースに

全車がピットロードに戻ったタイミングで残り2周となるが、運営側はフルコースイエローの1周を挟んだファイナルラップ1周でレースをさせる驚きの判断を下した。たった1周のペースカーランでドライバーはマシンやタイヤの感触をつかめるだろうか? 「なにがなんでもグリーン状態でレースを終了させる」という運営側の執念を感じる判断だった。

ファイナルラップの攻防

ファイナルラップエリクソンはリスタートでうまく加速したが、ニューガーデンはターン2で真後ろに付け、ターン3手前で前に出た。ピットロード入口に大きくはみ出しながらの2人の攻防は、チェッカーの瞬間まで続いた。

米国人ドライバーによる最終周の大逆転で、会場は割れんばかりの大歓声に包まれた。2度の年間王者を獲得するも、インディ500では不遇だったニューガーデン。ウィンニングランを終えてマシンから降りると、観客席に駆け込んで喜びを爆発させた。

佐藤琢磨は奮闘及ばず7位。今回のレースで引退するカナーンは16位だったが、115周目のターン3手前で芝生に4輪を飛び出しながら佐藤とマクロクリンを一気にパスするスーパープレイをみせた。

スペクタクルと大逆転で興行としてはめでたしめでたし…ではあったが、最終ラップ1周を競わせるために都合3回も赤旗を入れた運営側の判断は、F1オーストラリアGPにも重なる違和感が残った。一方で、イエロー解除前に露骨にスロー走行して後続に玉突き衝突の危険を与えたドライバーの走りなど、カテゴリーの枠を超えた課題が見えた今年のインディ500だった。