F1五輪観戦記

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角田、ドライバーの幅を広げるチャンスに——リカルド加入、デ・フリース更迭に思う

デ・フリースが開幕から10レースを終えたところで、アルファタウリから解雇。次戦ハンガリー以降はレッドブルのサードドライバーを務めていたリカルドが乗ることが決まった。

Twitterで散発的に書いてきた、今回のドライバー人事に対する感想をまとめてみた。

(※複数のTweetをつなぎ合わせた文章なので、内容の重複があるなど、文章構成がうまくいっていません。ハンガリーGPまでに形にしようと急いだためです。ご了承ください)

角田、飛躍のチャンスをつかめるか?

角田にとって、元レッドブル所属で通算8勝のベテランを迎えるのは、ドライバーとしての幅を広げるチャンスだ。 レッドブル昇格を見据えた心構えや、フェルスタッペンの強さ、レッドブルと格下チームの違い、弱いチームを引き上げる人心掌握術、スランプへの対処など、聞くべきことは山ほどある。 どこまで吸収できるだろうか。

角田は今年チームリーダーになって、相手を押さえ込む老獪なバトルもできるようになった。

特に第2戦のサウジアラビアでのマグヌッセンに対するバトルは出色の出来だった。相手を壁に押しやるでもなく、ジグザグ走行で抑えるでもない。最速ラインにデンと居座って相手に付け入る隙を与えない走りは、3年目の成長を感じさせた。

しかし、いかんせんマシンに力がない。今年をもって代表を退任するフランツ・トストからも「エンジニアを信用できない」との不穏な発言まで飛び出した。

角田にとって、このまま12位、13位争いを続けてもほとんど経験にならないと感じる。万年赤字のダメ企業に勤めているようなものだろうか。

私は来年末までリカルドからじっくりと吸収し、アルファタウリを立て直してからのレッドブル昇格が望ましいと感じる。仮に来年角田が昇格しても、経験不足を露呈したガスリーやアルボンと同じ道を歩みそうな気がする。

もちろん、レッドブル昇格は「リカルドより速いことを証明する」ことが大前提だ。

ナンバーツーではなく、リーダーとしての昇格を目指して欲しい

フェルスタッペンも、ハミルトンも、かつてのアロンソも、チームを鼓舞し、開発の方向性を助言し、有能な人材を活かしてチャンピオンに上り詰めた。

例えばフェルスタッペンのいない状態で19年オーストリアの優勝があったか。21年にホンダとレッドブルが死力を尽くして最終戦でタイトルを取れたか。22年にホンダがHRCとしてF1界に残ったか、と問われると「それはない」と断言できる。

角田にはリカルドとのパートナーを通じて単に「速く走る」だけでなく、「チームを強くする」知恵を学んでほしい。

新人には厳しい、公道やナイトレースばかりの序盤戦

開幕後から不用意なミスやクラッシュが続いたとはいえ、デ・フリース解雇はあまりに早すぎる。レッドブルグループはまたも使い捨てで1人のドライバー人生を潰してしまった。

今年のカレンダーは新人に厳しい。開幕戦からナイトレースや市街地、半公道の仮設コースが続いた。第6戦で予定されていたエミリアロマーニャが現地の洪水で中止となったため、常設サーキットの昼間のレースは第8戦のバルセロナが初めてで、シルバーストンでようやく3つ目だった。

2018年に終始不振にあえいだハートレーも1年は面倒をみた。トスト代表継続だったらデ・フリースの継続で盾になっていただろう(できれば年内、少なくとも夏休み前までは)。

角田に対してあれだけ盾になった人が、簡単にクビを同意するとも思えない。

チャンスを掴んだリカルド

リカルドは晴天の霹靂(へきれき)でF1に帰ってくる。

イギリスGP翌週のタイヤテストで、予選フロントロウに相当するタイムを記録したことが決め手になったといわれる。

リカルドは角田を明確に上回る速さを見せられるなら、レッドブル復帰の道が大きく開けることになる。目の前にニンジンをぶら下げられた状態だ。しかしベテランとはいえ、シーズン中にぽっと乗ってすぐ結果を出すのは困難だと思うが、どうだろうか?

ペレスもまた、正念場に

ペレスはシルバーストンまでの5戦連続で予選Q3進出を逃した。モナコでの予選初っぱなのクラッシュや、オーストリアでの3回のトラックリミット違反によるノータイムなど、ドライバーのメンタルが疑われる単純ミスが相次いだ。

現在のフェルスタッペンとのポイント差は99点だが、そのうち85点はマイアミ終了後の5戦でついた差だ。レースペースの差も小さくないが、決勝グリッド位置の悪さが最もポイント差に影響したと考えて間違いないだろう。

非情なレッドブルとはいえ、ランキング2位のドライバーをシーズン中に降格させる真似はしなかった。ペレスの契約は24年まであるが、もはや「契約が守られる方が不思議」という状態に至ったと思える。

ハンガロリンク以降もフェルスタッペン得意の常設サーキットが続くが、ペレスが一矢報いることはできるだろうか?

ドライバーの準備を待たないマルコ、急ぐ理由がある角田

仮に24年にレッドブルに空席ができたとしても、上述の通り、角田の昇格は1年早い気がする。トップチームでエースドライバーになるための経験を積ませるには、あと1年半リカルドとタッグを組むのが適当という気がする。

しかし、レッドブルのアドバイザーを務めるヘルムート・マルコは「他人を押しのけてでも勝つ」ことを求める人。「今年中にトップチーム入りの準備ができないなら、用はない」と思っていてもおかしくない。

また、角田にとってはレッドブル昇格を急ぐ理由がある。ホンダRBPTの搭載は25年までで、再来年レッドブルに昇格してもホンダのサポートを得られるのは1年しかない。是が非でも来年昇格し、2年間のホンダRBPTの搭載マシンで結果を出したい。

私としては、角田とリカルドの全力勝負を見てみたい気持ちが半分と、いまのアルファタウリの惨状で昇格争いをさせる意味があるんだろうか?という気持ちが半分だ。12位や13位を走りながら来季の昇格争いをさせても参考にならない気がするのだが。

いずれにせよ、レッドブル1台とアルファタウリ2台のストーブリーグは熱くなりそうだ。