F1五輪観戦記

F1を中心に、五輪なども取り上げるスポーツ観戦記です

フェルスタッペン6勝目、王者そろい踏みの表彰台——カナダGP

3人の王者とともに表彰台に立つエイドリアン・ニューウェイ。ニューウェイにとっても通算200勝だった

フェルスタッペンが首位を一度も譲らぬポール・トゥ・ウィンで、マイアミから4連勝となる今季6勝目を挙げた。通算勝利もセナに並ぶ41勝に伸ばし、レッドブルチームとしても節目の100勝目となった。2位はアロンソ、3位にハミルトンが入り、チャンピオン経験者が格の違いを見せつけた。そして表彰台には節目の勝利を喜ぶ、もう1人の「絶対王者」の姿があった。

盤石のフェルスタッペン、レース巧者ぶりを見せつけたアロンソ

フェルスタッペンはレース後、「タイヤの扱いに苦労した」と語ったが、後続をじりじりと引き離す9秒5差の勝利に文句はないだろう。唯一、70周レースの64周目、複合の9コーナー内側の縁石に大きく乗り上げ、バランスを崩しかかる場面があったが、本人は余裕を持って切り抜けた。

快勝したフェルスタッペン

2番グリッドのアロンソはスタートでハミルトンの後ろに下がったが、22周目のバックストレートでDRSを使って真後ろにつけ、最終シケインのブレーキング勝負で抜き返した。その後は徐々に引き離し、ハミルトンに一時は4秒以上の差をつけた。

しかしレース後半、ハミルトンに「アロンソがブレーキに問題を抱えている」との無線が入ると、追い上げを開始。60周目前後に一時2秒以内に詰めたが、アロンソはDRS圏入りを許さず、最終的に4秒5差でゴールした。

レース後のアロンソはトラブルの有無は言及しなかった。しかし、ハミルトン接近に対する緩急をつけたレース巧者ぶりはさすがだ。

表彰式ではレッドブルチームを代表してエイドリアン・ニューウェイも登壇。彼にとっても自身のマシンの通算200勝目だった。彼らしい、やや控えめなたたずまいで勝利を喜んだ。F1公式Twitterによると、4人の合計タイトル数は34(!)、合計勝利数も376となる(フェルスタッペン41+アロンソ32+ハミルトン103+ニューウェイ200)。

今後、これだけ豪華な表彰式は見られるだろうか?(彼らに加えてロス・ブラウンジャン・トッドが表彰式のプレゼンターを務めたらもっと引き上がるかもしれない)

アルボン、後方6台を抑え切る大健闘

アルボンは大殊勲の7位。レース後半、アルボンを先頭にオコン、ノリス、ボッタス、ストロールが数珠つなぎとなり、最終盤はピアストリ、ガスリーも加わる7台のバトルとなった。特にアルボンとオコンは終始DRS圏に入る激戦となったが、アルボンは直線の速さを生かして最後までオコンに付け入る隙を与えなかった。

Twitterにおもしろい画像が上がっていた。モナコGPなどでマシンの撤去で宙吊りとされた際、各車のフロアの構造があらわになった(※該当の画像は見つけられず)。複雑な曲面構造で、各所にフィンが設けられたレッドブルと比べ、ウィリアムズのフロアの造形はなんと単純なことか。このマシンで今季7ポイントを稼いだアルボンはさすがだ。

最終ラップの最終コーナーでドラマ

8位のオコンは最終盤、アルボンを追うどころか後ろのノリスに再三にわたって攻め込まれ、ついに最終ラップの最終シケイン前の直線でアウトから並ばれ、一瞬ノリスが前に出た。しかし、オコンは断固としてラインを守り、ノリスはやむなくエスケープロードへ避難する。

最終ラップ、最終シケインの攻防

前戦スペインGPで、特に日本人ファンの物議を醸したのは、周冠宇とのバトルに伴う角田裕毅の5秒ペナルティだった。今回、同様に相手をエスケープロードに逃げさせたオコンは問題ないのか。やや釈然としない。

ノリスはストレートで並んだが、コーナーのエイペックスでは前に出ていない。スペインの状況とは異なるのは確かだが、私がこうした違和感を抱くのは日本人の身内びいきのせいもあるだろう。

個人的には、「接触でもないバトルにオフィシャルは細かく介入するべきではない」と感じる。ルール通りの運用というなら「ルールのほうが細かく規定しすぎ」ではないだろうか。インを閉められた側のドライバーはムカつくだろうし、無線で罵詈雑言を飛ばしはするだろうが、それをオフィシャルが真に受けるのはいかがなものか。

ドライバーや関係者が騒げば騒ぐほど規定は細かくなり、ルール適用に人間の良識が入る余地はなくなっていく。どこかの国の税法のような複雑さをレースファンは望んでいるのだろうか? もっとも、「人間の良識」自体の信用が失墜しているのが痛いところだ。

予選で健闘のヒュルケンベルグと、苦戦した王者のチームメイトたち

大健闘といえば、Q1のレインから半乾きの状態となったQ3まで進出し、2番手タイムを出したヒュルケンベルグを忘れてはならない。Q3後半に雨が落ちてピットに戻り、セッション終了のカウントダウンでクルーと喜びを分かち合う光景は、21年ブラジルのマグヌッセンと似ていた。他車の進路妨害で3グリッド降格となったのは残念だ。

チャンピオンのチームメイトたちは軒並み苦戦を強いられた。ラッセルはハミルトンに次ぐ4位を走行中に9コーナー明けで壁に接触してタイヤとホイールを破損。タイヤ交換後に追い上げたが、のちにリタイヤした。

トロールはアルボンの集団の後方に埋もれ、ポイント圏外をさまよった。しかし、最終周の最終シケイン立ち上がり、コントロールラインのすぐ手前でボッタスを抜き10位でゴール(ノリスのペナルティで繰り上がり、最終結果は9位)。地元でなんとか面目を保った。

ペレス、またも予選のミスが響く。王座争いは終戦か?

そして、ペレスは6位に沈んだ。ドライパッチも見えた予選Q2の最初のアタックでタイムを出せず、セッション後半は雨が強くなりQ3進出を逃した。本来はレース巧者のはずだが、3戦連続の予選のミスでは挽回のしようがない。

これでフェルスタッペンとのポイント差は69。マイアミGPの観戦記で、「市街地、または市街地の性格が強いモナコやカナダを見るまではチャンピオンシップの行方は断定できない」と書いたが、今後のF1カレンダーはフェルスタッペンが圧倒的に強いパーマネントサーキットでの開催が続く。残念ながら、王座争いの観点では今季はもう終戦という感じがする。