F1五輪観戦記

F1を中心に、五輪なども取り上げるスポーツ観戦記です

ピアストリが輝き、角田が久々の入賞を果たしたベルギーGP

今季10勝目を飾ったフェルスタッペン(右)と、2位に入り久々の1-2をチームにもたらしたペレス

フェルスタッペンがスプリントと決勝の両方を制し、自身の連勝を「8」、チームの開幕連勝記録を「12」に伸ばした。

この週末は2人のドライバーの活躍が目立った。1人は土曜日のスプリントで2位に入った新人のピアストリ。もう1人は日曜の決勝でオコンらとの好バトルの末、10位入賞を果たした角田裕毅だ。

日本のF1ファンは後半戦への期待を胸に、夏休みを迎えることができた。

土曜日に輝いたピアストリ

ピアストリは土曜日に逸材ぶりを見せつけた。

ウェットからドライ方向へ変わる難コンディションのなか、スプリント・シュートアウト(=SQ、スプリントのグリッドを決める土曜午前のセッション)のSQ3でフェルスタッペンに0.011秒差へ迫る2番手タイムを記録した。

大雨で開始が遅れたスプリントでも、セーフティーカー(SC)解除と同時にインターミディエイトへ履き替える判断が功を奏し、1周遅れてタイヤ交換したフェルスタッペンの前へ出た。6周目にフェルスタッペンに逆転されて2位でレースを終えたものの、昨年マクラーレンとアルピーヌが奪い合った才能はダテではないことを示した。

スプリントで一時首位に立ったピアストリを追いかけるフェルスタッペン

このスプリントで物議を醸したのがペレスとハミルトンの接触だった。6周目のポール・フレールでハミルトンがペレスのインを差してサイド・バイ・サイドとなるが、ハミルトンが外にはらんでペレスと接触。ペレスはマシンのダメージでリタイアし、ハミルトンには5秒ペナルティが課せられた。

私見だが、ペナルティでせっかくの余韻を冷まさないでほしい、と感じる。ハミルトンが無理な突っ込みをしたとはいえず、正々堂々と互いの意地をぶつけ合った好バトルだった。コーナーアウト側で粘ったペレスも相応のリスクを取って走った場面で、レーシングアクシデントと裁定するのが妥当なように思う。

お互いの意地が見えた、ペレスとハミルトンのバトル

スプリント導入の際に「翌日の決勝を見据えて誰も無理な走りはしない」と言われたが、今回はそこかしこでバトルが見られた。インターミディエイトでオー・ルージュ手前をサイド・バイ・サイドで駆け抜ける姿はゾクゾクする。運営側はとやかく口出しをしないでほしい。

フェルスタッペン快勝、レース中盤の小雨が中団勢に影響

決勝は晴れたが、レース中盤に小雨がぱらついた。その際のタイヤ選択が中団グループの順位を左右することとなった。

予選トップタイムのフェルスタッペンはギヤボックス交換のペナルティで6番手スタート。代わりにポールからスタートするのはルクレールで、2番グリッドがペレスだった。角田は惜しくもQ3進出を逃し11番手。

ペレスが1周目のケメルストレートで目の覚めるようなオーバーテイクを見せ、首位に浮上。一方、土曜日に活躍したピアストリは1コーナーでサインツ接触しリタイヤを喫する。

1周目のケメルストレートでルクレールをアウト側からかわすペレス

角田は1周目の1コーナーからオー・ルージュにかけてごぼう抜きを演じて8位に浮上。その後ノリスらを抜いて一時は6番手を走行した。

フェルスタッペンは17周目のケメルストレートでペレスをパスして首位に立った。優勝争いという意味ではここで勝負あった。21周目のオー・ルージュで大きく縁石に乗り上げるミスをしたが、際どく切り抜けた。

オー・ルージュで際どく縁石を乗り上げたフェルスタッペン

各車のタイヤ交換タイミング

18周目ごろから24周目にかけて小雨が落ちたが、路面を濡らすほどではない。各車が天候の変化をうかがうなか、17周目にノリス、20周目にストロール、22周目にラッセルがソフトタイヤに交換した。

結果的に、小雨状態の3台のペースがミディアム勢と比べて速いうえ、レースの残り半分以上をソフトで走り切ってしまった。ノリスは一時は最後尾に落ちながら好タイム連発で7位に駆け上がり、ラッセルとストロールは1ストップとすることで角田らの前に出た。

角田、好バトルの末に久々の入賞

スタートシーンを含む、角田のオーバーテイクのハイライト

角田は6番手走行中の9周目にミディアムからミディアムに交換し、24周目にソフトに交換する2回ストップ作戦を採用した。しかし、タイヤが消耗したレース終盤はアルピーヌ勢への防戦を余儀なくされた。

ハイライトはオコンとのバトル。オコンは39周目のレ・コームのブレーキングで思い切ってアウト側から被せ、角田を抜き去った。角田も際どく接触を避けた。DRSでの決着が多い昨今のF1では珍しい、ブレーキング競争による白熱のバトルだった。

好バトルを演じた角田とオコン

角田は10位でフィニッシュ。早めにソフトに交換したノリスら3台に前に出られたことが響いた。タイヤ交換作戦によってはより上位もあり得たが、あくまで結果論であり、まずはポイントを取って夏休みを迎えたことは大きいだろう。

またもトロフィーが壊れる受難

勝ったフェルスタッペンはランキング2位のペレスに125点差をつけた。順当にいけばカタールでのタイトル決定が濃厚(カタールGP終了までの5戦で29点差、つまり1戦あたり6点差を広げる条件)だが、日本GP終了までの4戦で55点差を広げれば鈴鹿でタイトル決定の可能性もある。1戦あたり14点。フェルスタッペンの勢いなら不可能とはいえない気がする。

唯一、フェルスタッペンに降り掛かった災難は、前戦に続いてトロフィーが壊れたこと。レース後にドライバーとチームクルーが勝利を喜ぶ「レッドブルファイト」のはずみでトロフィーが倒されてしまった。

フェルスタッペンのトロフィーはまたも受難に。。。

トロフィーがフェルスタッペンの不運を一身に背負ったのだろうか。レッドブル無敗のままシーズンは折り返しを過ぎ、F1は8月末のオランダGPまで夏休みに入った。