F1五輪観戦記

F1を中心に、五輪なども取り上げるスポーツ観戦記です

ホンダの26年「F1継続」と、アストンマーティン提携に寄せて

ホンダはアストンマーティン提携による26年のF1復帰を発表した

ホンダは5月24日、2026年にF1へ参戦し、アストンマーティンにワークス待遇でパワーユニットを供給すると発表した。

報道では「F1復帰」と表記されることが多いが、現在の「レッドブル・ホンダRBPT」の活躍を鑑み、私の記事としては「F1継続」と表現したい。

まずは個人的なお祝いのメッセージから。


ホンダさん、「F1継続」の正式決定、おめでとうございます。23年シーズンのレッドブル・ホンダRBPTの独走に驚きつつも、エンジンネームが「ホンダ」でないことに、心にわだかまりがありました。ようやく落ち着いて26年シーズンを待つことができそうです。決定に心から感謝します。

新パートナーとF1王座への挑戦をイチからやり直すこととなりますが、その道筋はファンにとっても心躍るものになると信じています。競技としての楽しみに加え、F1発の技術がクルマ以外の多用途で生かされるよう願っています。

今度こそ、技術者の心をくじくことがないよう、どうか長い目で競技に取り組んでください。日本人が母国の技術力への自信を失いかけたとき、希望の光を与えてくれたのが21年のフェルスタッペン戴冠でした。26年以降、その輝きがさらに増すよう望んでいます。


3カ月半でホンダとの交渉をまとめたストロール

手前味噌だが、2月にレッドブルとホンダ(HRC)の25年末でのパートナー終了が明らかとなり、26年以降の活動が不透明となったとき、私は「アストンマーティン提携によるホンダF1継続の可能性は十分ある」と考えていた。

https://formula1olympic.wordpress.com/2023/02/12/際立つレッドブルの交渉力と、居場所を失ったホ/
レッドブル・フォード発表とホンダのF1活動について書いた2月の記事

私が書いた2月の記事では、提携相手の本命はマクラーレンとみていたが、アストンマーティンも「実態はローレンス・ストロールのプライベートチームであり、提携の可能性は十分ある」「ストロールが市販車部門を含めた提携話を持ちかけてもおかしくない」と書いた。

3月にポルシェのF1参入断念が伝えられたとき、「ホンダは一層、引く手あまたの存在になった」と感じた。プライベーターたちにとってはポルシェによるチーム買い取りの道が絶たれ、チームのワークス化(あるいはチーム売却による手仕舞い)にはホンダとの提携が不可欠となったからだ。

(※追記:もう一つの準ワークス化の道は、ザウバーと袂を分かつアルファロメオとの提携だが、これはハースが勝ち取ることになりそうだ)

2月にマクラーレンとホンダの接触が報道されたが、その後の交渉は音沙汰なし。その矢先の5月23日、「ホンダとHRCが記者会見を準備」「会見にはアストンマーティン関係者も登壇」とのニュースが飛び込んだ。

「たった3カ月半でホンダとの交渉をまとめる胆力は、ローレンス・ストロールしか持ち得なかったか」。会見の予告を見てそう感じた。マクラーレンは今年、チーム代表がアンドレア・ステラに変わったばかり。成績も低迷し、長期戦略どころではなかったのだろうか。

追記:「ホンダ質疑応答全文」によると、「アストンマーティンとは1月から本格的な議論を始め、4月に基本骨格で合意した」(HRC渡辺社長)ようだ。

記者会見に登壇した(左から)ホンダ・レーシングHRC)の渡辺康治社長、ホンダの三部敏宏社長、アストンマーティンのローレンス・ストロール会長、アストンマーティン・パフォーマンス・テクノロジー・グループCEOのマーティン・ウィットマーシュ

アストンマーティンとの提携は面白い。経営能力に秀でた大富豪が異業種からF1に参入し、瀕死のチームを買収して戦力を引き上げた経緯はレッドブルとよく似ている。

ホンダにとっては中間管理職だらけのチームよりも、誰がトップか一目でわかるチームの方が相性が良いように思う。

現在は一部車種でメルセデス製エンジンを積むアストンマーティンの市販車部門でも、ホンダとの協業の可能性があるかもしれない。余談だが、東京・青山一丁目のホンダ本社と、アストンマーティン東京のショールーム青山通りを挟んで向かい合わせだ。

東京在住ながら、筆者にはあまり土地勘がない青山一丁目の地図

「可能性ゼロでないなら何でも起こりうる」、F1の世界

一方で、以下の疑問も浮かぶ。

  • 26年のドライバーは誰か?
    • 角田裕毅の起用に期待したい。23年シーズンの彼の走りは素晴らしい。しかし、アロンソの後任でワークスのファーストドライバーが務まるか?と問われると、今後の成長を待ちたい。また、彼にはレッドブル昇格の道もある。
    • 一方で、26年のアロンソの現役続行にも期待したい
    • ハミルトン移籍なんて話も出ているらしい(ホントかね!?)
    • フェルスタッペンはホンダを失うことを嘆いているようで、フォードの戦力を懸念してアストンマーティンに移る可能性も否定できない。現に、4年前に同じ理由でレッドブルを離れたリカルドという前例がある。
    • 「父親のチームでシートは安泰」といわれるストロールも、本当に26年もドライバー生活を続けている保証はない
  • 現在のアルファタウリに該当するような第2の供給先はないのか?
    • 開発の観点では2チーム分の走行データが欲しい。しかし、現状では具体的な動きは見えない
  • 21年に撤退した際に引き払った設備や人員などの体制は整えられるのか?
    • 開発面、マネジメント面で先頭に立った浅木泰昭氏、田辺豊治氏、山本雅史氏の後任にあたる人物は確保できるだろうか?
  • 次に社長が変わったら、またF1撤退と言い出さないか?
    • これが一番重要な問題だ

私としては、どんなに荒唐無稽と思える予想であっても「可能性がゼロでない以上は、F1では何が起きてもおかしくない」と考えている。

26年を見据えると、新タッグのレッドブル・フォードが走り出しからトラブルなくトップ性能を発揮するとは考えづらく、新生アウディの船出も困難に違いない。

その場合、アストンマーティンメルセデスフェラーリの3すくみの戦いになる可能性がある。その激闘を楽しみにしたい。


※本記事より、Aston Martinの表記は公式サイトに合わせ、「アストンマーティン」に変えました。