F1五輪観戦記

F1を中心に、五輪なども取り上げるスポーツ観戦記です

「トラックリミット騒動」が主役のレースに——オーストリアGP

物議を醸したトラックリミット違反

フェルスタッペン7勝目も、フェラーリ久々の首位走行も、4位ノリスの健闘も「トラックリミット違反」騒動で消し飛んだレースだった。9コーナーから最終コーナー立ち上がりの高速区間で、レース中のトラックリミット違反の審議対象は1200件。違反の認定は83件に達した

(※なお、トラックリミット違反4回目で5秒ペナルティ、5回目で10秒ペナルティが課される)

前のクルマがコースの白線をはみ出したことを告げ口するドライバー無線や、頻繁にタイム加算ペナルティを表示するテロップを見て、このスポーツの尊厳が本気で心配になった。レースを見ている誰もが本当の順位がわからない。

レース後もアストンマーチンの抗議で審議をやり直し、サインツやハミルトンなどが降格に。最終結果が出たのはレース終了から5時間が過ぎた現地時間21時45分のことだった

これだけ乱発されるペナルティをスッキリと解決するなら、ランオフエリアのアスファルトをはがし、グラベルや芝生とすることだ。2022年のスパの改修のように。

ランオフエリアがグラベルだった1998年のオーストリアで、ハッキネンと激しいバトルを繰り広げたシューマッハは9コーナー先でグラベルに飛び出し、ウィングを破損した。ハッキネン攻略を焦ったシューマッハのミスだった。

チャンピオンシップの転換点になるとともに、ハッキネンはタイマン勝負でシューマッハにも打ち勝てると証明した。90年のF3マカオとは逆パターンだ。ランオフがアスファルトなら、あれほど印象的な場面とはならなかっただろう。

9コーナー外側がグラベルだった98年、ハッキネンとのバトルでミスし、コース外へ飛び出したシューマッハ

グラベルの場合、マシンが跳ねると減速しきれない、小石がコース内に飛び散る、などのデメリットがあるのは百も承知だ。しかし、ランオフがアスファルトならライン際ギリギリまで攻めたくなるのはドライバーの本能だ。

ランオフをアスファルトのままとするなら、ソーセージ縁石を敷き詰めるか、インディやNASCARのように「白線またぎ上等」と黙認するかのいずれかだ(実際、COTAのライン取りはインディの方が見ていて面白い)。

冗談はさておき、優勝したフェルスタッペンのトラックリミット違反は57周目のたった1回。ルクレール、ペレス、ノリス、アロンソの上位5台もペナルティはまぬがれた。(※ただし、ペレスは予選Q2のトラックリミット違反で15位に沈んだ失地を挽回したに過ぎない)

トラックリミット違反に罰則があるなら、白線を遵守するのがドライバーの務めであることは確かだ。強いドライバー、かつ速いマシンはどのような条件下でも適応できることを示した1戦だった。