ペレス、タイトル争いの権利を取り戻す今季2勝目——アゼルバイジャンGP
ペレスが得意の市街地コースで今季2勝目を挙げた。土曜日のスプリントの勝利と合わせて33点を稼ぎ、チームメイトでランキング首位のフェルスタッペンとの点差を「6」に縮めた。前戦オーストラリアの予選クラッシュで失いかけた王座争いの権利を、自力で取り戻した格好だ。
ペレス、終盤にかけてじりじり差を広げる
レースはポールポジションのルクレールが1コーナーを制するが、4周目にフェルスタッペン、6周目にペレスに抜かれて3位に落ちた。フェルスタッペンは一時首位に立つも、セーフティーカー出動直前のタイミングでタイヤ交換する不運で順位を落とす。かわって首位に浮上したペレスはレース中盤から終盤にかけて、後ろに控える2位フェルスタッペンとの差をじりじり開き、2秒1差でゴールした。
レース終盤、上位勢の順位変動はなかったが、市街地の壁際を駆け抜ける各ドライバーの走りは見ごたえがあった。ペレスもターン15のテックプロ・バリアに右フロントを接触し、タイヤ側面に跡ができていた。
ペレスは通算6勝のうち、今回を含む5つが市街地での優勝だ。私はサウジアラビアGPの記事で「ペレスがオーストラリアやアゼルバイジャンを制するなら、王座獲得の有力候補に躍り出るかもしれない」と書いた。オーストラリアの優勝はならなかったが、バクーの完全勝利で流れを引き寄せた格好だろうか。
次戦以降もマイアミ、モナコ、カナダといった公道、もしくは公道の性格の強いコースが控える。レッドブル首脳に公平なタイトル争い——つまり、チームオーダーのない自由競争——をアピールするには、ペレスはこれらのコースの制覇が必要となりそうだ。
跳ね馬の騎士ルクレール、今季初表彰台
3位にはアロンソの追撃を振り切ったルクレールが入り、フェラーリに今季初の表彰台をもたらした。ルクレールは土曜日のスプリントでも、ラッセルとの接触で手負いのフェルスタッペンを抑えて2位を得た。フェラーリにとっては久々に明るい兆しが見える週末となった。
私の目にルクレールの走りが変わったように見えたのは、土曜日のスプリント・シュートアウト(SQ)の最終アタックだった(※SQ:今回のGPで初導入された、スプリントのグリッドを決めるための土曜午前の予選セッション)。
ルクレールはSQ3の1回目のアタックでトップタイムを叩き出し、2回目のアタックでタイム更新を狙うも、ターン5アウト側のバリアに前から突っ込んだ。幸い、ノーズとフロントウィングの破損ですみ、ルクレールはそのままピットに戻った。午後のスプリントの出走にも問題なかった。
ルクレールはクラッシュの直前、ステアリングをまっすぐに戻し、バリアへの斜めへの衝突を防いでいた。斜めにぶつかった場合、ウィングのみならず前後サスペンションへの損害も想定される。一瞬の判断でダメージを最小限にとどめたところにルクレールの落ち着きを感じさせた。(※同様に予選最終アタックでクラッシュした2021年のモナコを思い出してほしい)。
ルクレールは金曜予選、土曜SQと合わせて、二度もトップタイムを獲得してみせた。しかし、マシンの最高速は伸び悩み、タイヤの持ちもイマイチで、レース後のルクレールの表情は暗かった。それでも、彼らにいつか復活優勝の日が巡ってくることを楽しみにしたい。
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